宇宙のみなしご/森絵都
時代は刻々と流れてるんだよ
ー008
「おい、大事な問題だぞ」
『でも、わたしの問題だし』
ー013
やはり大切なのは基本なのだ。
ー029
「いつもはただの中学生で、じつにただの中学生なのよ」
ー040
縁起をかついで傘を持ってこなかったから、ぬれて帰るのは覚悟のうえだった。
昇降口にごった返す生徒たちは、みんな色とりどりの傘を手にしている。枯れ木に花を咲かせるように、グレーの空に向けて傘を広げる。
どうしてわたしだけ傘がないんだろう。
そうか、縁起をかついでもってこなかったんだ、と思った。
ー44.45
頭の中で十一匹の白熊がエアロビクスを始めそうになり、わたしは慌ててテレビのボリュームをあげた。
ー052
宮殿のお姫さまがジャングルに足を踏みいれるようなものだ。
しかし、姫はきたのである。
ー053
ほっぺがときめきのピンク色だ。
ー064
息までピンクに色づいて見える。
ー064
ひさしぶりに頭のなかで十八匹のマウンテンゴリラが二組にわかれて綱引きでもはじめそうだ。
ー067
ぞうきんだって自分の役目ぐらい、いまの段階で把握しているはずなのに。
ー068
数学の方程式にとりくみながらも、七瀬さんはときおりちらちらと腕時計に目をむける。その横顔はまるでシンデレラだ。
ー070
見つかったらただの犯罪者で、それなりの覚悟がいるわりに、やっていること自体は徹底的にくだらない。
そのかわり、わたしたちはその夜を手にいれる。
ー074
午前一時十五分。
草木も眠るうしみつどき。こんな時間帯には絶対にあいたくないやつと、しかもロミオとジュリエットみたいな状態で、わたしは対面するはめになった。
ー077
まるでトンボにむかってエンゲル係数の説明でもしている感じだった。
ー080
センチメンタルな面もち。
ー090
大人もいろいろと大変そうだ。
屋根のことで苦労しているうちが花かもしれない。
ー093
地面にめりこんでマグマをつきぬけブラジルまで落っこちていきこうなくらい、重い。
ー096
楽しくなければ遊びじゃない。
ー100
「だいじょうぶ。大切なのは季節じゃなくて笑顔だよ。どうどうと笑いながらいうの」
ー101
二十四色の絵の具のうち、黒だけをすり減らしていくような毎日。
ー125
「大人も子供もだれだって、いちばんしんどいときは、ひとりで切りぬけるしかないんだ、って」
ー202
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。自分の力できらきら輝いてないと、宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃうんだよ、って」
ー202
優しくて綺麗な言葉の羅列。
綺麗は儚くて美しい。
中二は永遠に強い。